恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


じっと、心配そうな瞳で。


「なにかあった?」

「……なにも」


答えられなかったのは、後ろめたい気持ちがあったから。


入学してすぐに、裏庭でされるいじめの存在を知った。

そういう卑怯な事は嫌いだったし、もとからカっとしやすい性格も手伝って、何度か止めにも入った事がある。

高校生にもなっていじめがあるなんて信じられなかったし、あたしが止められるならそうしたかった。

けど……、その度に返ってくるのは、『いい子ぶるな』とか、『偽善者』とか。

そんな言葉にキズついたりもしたけど、それでも続けていればいつかなくなるって思ってたのに。


かばった子にまで、『人気とり』みたいに言われて……、それから、止めに入るのをやめた。

裏庭にも行かなくなった。



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