恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
「……、」
「ところで、朱莉」
せっかく開きかけた気持ちを、先輩の言葉が止めた。
出鼻を挫かれた形になっちゃって、落ち込みながらため息を落とす。
タイミング悪い……。
けど、昂ってる気持ちはまだそのままある。
振られたっていい。
今、先輩に伝えたい……、
「―――山岸くんとはうまくいってる?」
それは……、先輩には一番聞かれたくない質問。
先輩の言葉に、声を吸い込まれたみたいに何も言えなくなった。
「……」
雨が降っている音が静かな教室に響く。
そんな音を聞きながら、先輩に背中を向ける。
先輩の言葉が悲しくて……、見ていられなかった。