恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


「…っ……」


止めようとしてるのに流れ続ける涙に、言葉にならない声がもれる。

天気予報通り激しくなった雨に消え入る泣き声は、静かな教室に消えていった。


先輩に気付かれない事を願いながら、なんとか声を出そうとした時。

後ろに気配を感じて、肩をすくめた。


次の瞬間、先輩があたしの体を向き直らせて……、腕の中に抱き寄せてた。




一度だけ知っている優しい腕に包まれて、頭が真っ白になる。


先輩の行動の理由がわらかなくて、どうしていいのか分からない。

抱き締める腕に、ギュッと少しだけ力を入れる先輩に、胸の内側が苦しくて、声がでない。


激しい雨の音以上に近くに響く先輩の心臓の音が、あたしの緊張を高めてた。



< 209 / 364 >

この作品をシェア

pagetop