恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


『もうかまわないで』

昨日言った言葉を覚えててくれれば、もしかしたら今日は止められないかもしれないし。

そしたら、紙袋だけ渡して教室に逃げ込めばいいんだし。


昨日の言葉を、先輩はどう受け止めたんだろ……。

言葉通りに取ったかな……。



そんな事を考えながら校門を入った時、先輩があたしに気付いたのが分かった。

……けど。

いつも微笑みかけてくる先輩が、今日はあたしを見ても表情を変えなかった。


『かまわないで』

そう言ったのはあたしなんだから……、これが当たり前なのに。

寂しさを感じた気持ちは、誤魔化せなくて。


Yシャツを返す勇気なんかどこかに消えちゃって、先輩から目を逸らしてそのまま門を通り過ぎようとした時。


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