恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


「朱莉」


先輩の声に止められた。


「……髪なら今度直してきますから」


振り向かないまま、それだけ言う。


「朱莉」


あたしが止まろうとしなかったからか、先輩の手があたしの腕を掴む。

無理矢理止められて、イライラしながら先輩を睨むように見上げた。


イライラの原因は、先輩が原因じゃない。

自分の気持ちのジレンマだ。


自分からかまわないでって言い出したくせに、微笑んでくれない先輩に一線引かれた気がしてショックだった。

そのくせ、こうして止められた事を嬉しく思ってる自分もいて。


そういう、ハンパな気持ちが、自分の中にいっぱい散らばってて気持ち悪い。




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