恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


『いじめに使われる事も多くてね』

そういえば、相沢先輩もそんな事言ってたっけ。


熱で頭がぼーっとしているせいか、昨日の先輩の言葉が懐かしく感じる。


幸か不幸か、こういう場数は踏んでいるけど……、1人が取り出した墨汁には驚きが隠せなかった。

びっくりしながら見てると、先輩達は満足そうにニヤって笑う。


「染めてあげようかと思って。

ホントはペンキとかがいいかと思ったんだけど、アレ、持ち出し許可が必要とか言うから、てっとりばやくコレでいっかーって」

「……染めるって、髪をですか?」

「そ。明日から相沢くんの気引けないようにしてやろうかと思って」

「相沢先輩は生徒会の仕事であたしに注意してるだけです。

それでも気に入らないなら、殴るなり蹴るなりすればいいじゃないですか」


本当は不本意だけど。

悪い事なんかしてないし、二股だとかそんなの、先輩達の誤解だ。


けど、壁を背中にして3人に囲まれた状態じゃ、多分逃げられない。


殴られたりしたら頭にくるけど……、でも。

墨汁なんか使って髪を染められるよりはまだいい。


全然いい。



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