恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
相沢先輩の姿に、あたしの髪を掴んでいた先輩の手が緩む。
それに気付いて、まだ至近距離にある墨汁のボトルを奪い取る。
先輩は「あ……、」って小さな声を上げただけで、取り返そうとはしなかった。
相沢先輩の登場に、かなり動揺してるみたいだった。
「だって……、この子が色んな男に色目使うから……。
ちょっと注意してただけだし……」
言い返そうとしたのに。
あたしより先に口を開いたのは相沢先輩だった。
「色目? 残念だけど、朱莉には使えないよ。
自分をアピールするなんて、まったくできない子だから。
そこが可愛いんだけど」
クスクスと笑いながら相沢先輩が言う。
あたしをかばってくれたハズの言葉なのに、なんでだかこっちまでおもしろくない気分にさせられる。