恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


「38、2°か……。思ったよりあるね」


保健室には、外から聞こえる雨音と時計の秒針の音だけが静かに響いていた。

ベッドに鼻まで潜り込んだあたしを、先輩が心配そうに見つめる。


そんな視線に耐えきれなくて、目を逸らした。


「あの……、相沢先輩、献血行かなきゃですよね?」


布団から出した指で指したのは、保健室の壁に貼ってあるプリント。

誕生日を過ぎて、18歳になった3年生に向けられたプリント。


強制ではなかったけど、ほぼ全員が献血する事になってるハズ。


あたしが指差した先にあるプリントを見た先輩が、プリントを見たまま返事をする。


「ああ。いいよ、別に。

……注射は好きじゃないし」

「……」



< 267 / 364 >

この作品をシェア

pagetop