恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
先輩の背中をにらみ続けるあたしの隣から、山岸が話しかけてくる。
遠巻きからあたし達のやりとりを見ていた3年からは、
「なに? 演劇部作りたくて直談判?」みたいな声がちらほら上がっていた。
「部員になってあげよっか?」なんて、冷やかしに近い声まで飛んできて、拳を握り締める。
「……ムカつく」
「気持ちは分かるけど会長には適わねぇよ。まず頭が適わねぇし」
「そこがまたムカつくっ!」
こんなの、返り討ちもいいとこだ。
完全にしてやられて、唇を噛み締めた。
『朱莉』
先輩の甘い声が、何度も頭にリピートされる。
どこまでも甘くて、頭の中から溶けそうなほどの声が。