恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
「時間がなくて着色剤を買いに行く暇がないんです。
今度時間ができたら買いに行って染め直しますから」
「そのいいわけが何ヶ月も通用すると思ってるなら、青山さんは俺を……、生徒会を甘く見すぎてると思うよ」
「甘くなんか見てないです。……けど、残念ながら生徒指導が終わるまでは暇になりそうもなくて」
毎回のように同じいいわけを繰り返すあたしを見て、相沢先輩は、やれやれって感じにため息をついてから、微笑む。
「じゃあ俺が買って来てあげるよ。
青山さんよりは俺の方が忙しいとは思うけど、それで髪の色が戻るなら仕方ない」
にっこりと笑顔を見せながらイヤミを言う相沢先輩を、きつく睨みつける。
寸分のくるいもない、ため息がでるほどの顔立ちも
どこまでも甘く響く低い声も
高い身長も
細く骨ばった大きなきれいな手も!
あたしにとっては全部がイライラする要素にしか思えなかった。