恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
「もし、男が好きだとしたら……朱莉にこんな事できないと思うけど」
状況が飲み込めないでいるあたしを、先輩の香りが支配する。
今まで何度か感じた事のある香り。
だけど、こんなにも直接吸い込んだのは初めてで。
一気に身体中に巡った香りが、思考回路をショートさせて頭を痺れさせる。
「俺の事を考えてくれるのは嬉しいんだけど、事実じゃない噂を広められると困るんだ。
いくら朱莉でも」
押し付けられた先輩の胸から、低い声が甘く響く。
「でも、これで分かってもらえた? ……それとも、もっと確かめたい?」
その言葉にハっとして、先輩の胸を押し返す。
「いらないっ! 必要ないですっ」
強い口調で言いながらも、きっと顔は真っ赤だったと思う。
その証拠に、あたしを見た先輩は満足そうにくすりと微笑んだ。
「それは残念」
せっかく弱点を見つけたと思ったのに!
完全な返り討ちをくらった気分だった。
強いイライラが、今日もあたしを襲う。