恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
「朱莉」
その笑顔に女子が「きゃあっ!」なんて声を上げたけど、それも聞こえてないみたいにあたしに近づく。
そして目の前までくると、親指と人差し指で持った校章バッジを見せた。
「これ、なんだか分かる?」
「……なにって、校章ですけど。
うちの高校の校章バッジです」
聞かれたから答えたのに、先輩は微笑んであたしを見たまま。
「……あたしにそんな事聞くためにわざわざ教室まで来たんですか?
髪が茶色くてもそれくらいは知ってます。
生徒会長には大事な用がたくさんあるのに結構暇なんですね」
さっきの仕返ししてやれと思って、作り笑顔で憎まれ口を叩く。
だけど、先輩はなぜか無反応で。
気になってじっと見ると、いつも通りの微笑みを返されて……、なんだか嫌な予感が頭をよぎる。