恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


「もちろん、これも大事な用のひとつだよ。

この校章バッジ、朱莉のだろ?」

「え、」

「さっき抱き締めた時、朱莉が急に俺から離れるから、その時俺の制服に引っかかったんだろ。

地面に落ちてたんだ」

「え? 抱き……?」


先輩の言葉に、驚いた顔した仁美が声をもらした。

耳を澄ませていた他の生徒もザワザワと騒ぎ出す。


「やっ、違う! 違うから!」


変な勘違いされてるのが分かって、慌てて手を振り回して否定していると、それを見た相沢先輩は、クスリと笑った。


「ああ、そっか。朱莉は秘密にしたかった?

ごめん、俺の配慮が足りなかったね」


わざとらしい演技を交えながら微笑んだ先輩が、あたしをじっと見る。



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