恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
……この、イヤミ男!
何も言えずにわなわなしていると、そんなあたしなんかおかまいなしの先輩が、あたしのブレザーの襟を軽く引っ張った。
そんな強い力で引っ張られたわけじゃないけど、そのせいで先輩との距離が近づいちゃって。
慌ててブレザーを引っ張り返した。
それを見た先輩が、校章をつけようとしていた手を止めて、少しだけ顔をしかめる。
「なに? 急に」
「だって先輩が……! あの、校章なら自分で……っ」
「ほら、じっとして。俺がつけてあげるから」
「やだっ! そんなの自分でできます!」
「ダメだよ。朱莉は意外と乱暴なところがあるんだから」
敵意向き出しのあたしを、先輩が微笑みながらなだめる。
まるで、あたしの事を知り尽くしてますって言いたそうな口ぶりで。
仕方なく大人しくしてると、先輩の指先が制服に触れる。
そして、あたしの身体に触れないように十分注意しながら、ブレザーの胸ポケットに校章をつけた。