恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
苦笑いをこぼしながら、仁美に借りたグロスを塗ってみると、わずかな重たさが唇に乗るのを感じた。
カバンから取リ出した手鏡の前で、一度上下の唇をぎゅっと結ぶ。
「あ、いいじゃん。朱莉ピンク似合うね」
いつもはつけないグロスをつけた唇は、リップとは違う違和感が残る。
ちょっと恥ずかしくなりながらも、仁美が褒めるからまんざらでもない気分になって、照れ笑いしていた時。
「あれ? 朱莉……なんかいつもと違う…? ん? 一緒か?」
遅れて登校してきた山岸が、眉間にシワを寄せながらあたしを覗き込んだ。
「山岸、ギリギリじゃん。
これ、グロスつけたからでしょ」
仁美がグロスを揺らして見せると、山岸があたしの唇をじっと見つめる。