恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*


「セクハラ? 風紀の一貫だよ。

こんな事で赤くなっちゃって……。可愛いね、朱莉」


まるで何もなかったみたいにいつも通りの笑顔で微笑んだ先輩が、階段を上がる。

その背中を、震える瞳で睨みつけた。


華奢に見えるのに、しっかりした背中を見てると、いつかの仁美の言葉を思い出す。


『腹筋割れてるよ』

割れてるって……、筋トレでもしてんのかな。

あの涼しそうな顔で?

……想像できないけど。

相沢先輩って……、なんかホントにどこまでも隙がない。


そんな先輩の後ろ姿を見つめていると、自然と諦めに近いため息が落ちた。


ため息が唇をかすめていって、また頬が熱くなる。


先輩に触られた唇……。

そこが、少しだけ熱を持ってる……。



< 67 / 364 >

この作品をシェア

pagetop