恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*
「結構です。あたし力づくでこのドア開けますから」
腕に自信なんかない。
だけど、“密室に2人きり”なんて状況、耐えられるわけがない。
どんな決め顔でどんなキザなセリフが飛んでくるか、考えただけで心臓が持たないし。
本人からすれば、ごく自然の笑顔も言葉も、受け取る側からしたら、たまったもんじゃないんだから!
「そう? でも気をつけてね。
そのドア、いわく付きだから」
後ろから気になる事を言われて、足が止まる。
「いわく?」
振り返ると、少し言いにくそうに表情を歪めた先輩が、ゆっくりと視線を落とした。
「もう何年も前らしいけど、そのドアに下敷きにされた生徒がいて……。倒れた時に、運悪くドアのガラス部分に頭を突っ込んだらしくて、」
「やだっ、ストップ……っ! あたし、そういう話苦手……」