恋の罠 *- 先輩の甘い誘惑 -*




先輩が何を考えているのか分からない。


でも、いつもはイライラしている気持ちが落ち着いていた。


先輩の大きな手から暖かさが伝わってきて、今まで感じていた恐怖感から、ゆっくりと解放されていくのを感じた。


それと同時に、恐怖からくるのとは違うドキドキが胸を襲う。


トクントクン、と静かに鼓動が速くなる。


繋がれた左手から、くっつきそうな肩から。

先輩の体温が伝わってきて、なぜだか泣きそうになった。


先輩の、いつもは見せない優しさが、苦しくて……うれしくて。


恐怖から解放されたからなのか、先輩の優しさに何か感じたからなのか、涙が目にたまる。


いつの間にか、震えは止まっていた。





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