こうして未来は繋がっていく―黒猫シロと僕―[完]
―――……
彼女の名前で送られてきた小包を開けると、一冊の絵本が入っていた。
そういえばそんな事をいっていたな…と頭の隅で思い出す。
絵本の表紙には、大きな木の下で眠る男の子とそのひざの上に丸まって眠る黒猫が描かれていた。
それを見て思わず笑みがもれる。
そっと表紙を撫でて、一ページ目をめくった。
<くろねこ シロ と ぼく >
さく・え: しいな かすみ
「すげぇな…」
彼女―――椎名 香澄とは、付き合って10年になる。
幼稚園の頃に売りに出された集合住宅に、同じ頃に引っ越してきた。
そういった意味での付き合い―幼馴染として―を入れると20年。
俺―――日比谷 大助は、働き出して5年目の消防士だ。
地元の消防署に配属されて、少ししてから一人暮らしを始めた。
不規則な仕事だから、少しでもいいから香澄と一緒に過ごしたくて。
香澄は保育士として近所の保育園で働いている。
そして、ずっと絵本を出したかったらしい。
保育士と絵本作家。
それが香澄の夢だった。