Burn one's boats



それからどうなったのか、僕は知らない。
少なくとも、隣の席でしなしなに萎んでいる様子から、こっぴどく叱られたのだろう。

一時間目のテストは国語だ。
漢文は葵が苦手とする範囲なのに……大丈夫なのかな?

昔、漢の韓信が趙と戦ったとき、わざと川を背に陣を敷き、退却すれば溺れる他ない捨て身の態勢で戦い、遂に敵を破ったという故事。

転じて、決死の覚悟で全力を尽くして事に当たること。

意味まで書いて、僕は気付いた。

あれ……?
もしかして僕、使い方間違ってた?

『薫も間違えることあるんだな』

隣でテストを投げ出して寝ている葵が、何だか憎たらしく感じた。

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