Burn one's boats
眼前の群衆はいきり立ち、各々武器を掲げている。
マズイよ。
普通に考えて、太刀打ちできるわけないじゃないか。
「ねぇ、葵(あおい)。やっぱり逃げようよ。こんなことしてる場合じゃないって。
ボート持って崖降りれば、何とか逃げられるって!」
「バカ言え。ここで逃げたら漢(おとこ)じゃない!」
隣の相棒――葵は僕の方を向いて顔をしかめた。
彼は戦いに長けてるが、少々頭が弱い。
何も考えずに敵陣に突っ込むことなど、多々あった。
今回もそうだ。
何も考えず、敵の寝込みを襲ったらこの結果だ。
軍を率いる頭なんだから、もう少し色々と考えて欲しい。
葵は敵を見据え、ボソリと呟いた。
「薫(かおる)……ボートを燃やせ」
「は、ハァ!?」
思わず大声で聞き返す。
しかし、葵は平然としたまま。