Burn one's boats
「薫、そろそろ行くぞ!」
「うん」
「お前は魔導師なんだから、おれのサポートをしてくれ」
「うん」
分かってる。
これもいつもの事。
僕たちは目配せをして、小さく頷いた。
法螺貝の音が聞こえてくる。
それを合図に、葵は敵軍へ突っ込んでいった。
後ろからでも分かる。
葵の前に立った敵は、次々と吹っ飛ばされていった。
僕はその場を動かず、葵の体力を回復する魔法を放つだけ。
何かそれも飽きたなあ……
と言うか、葵ばっかりに美味しいところ持っていかれたくない!
僕は本を開き、敵陣へ右手を翳した。
そして。
「ファイアっ!!」
葵の周りにいた敵が、全て燃え上がった。
苦しむ間も無く、一気に炭化した。
目の前に広がるのは、敵だったモノと、クリアへの道だった。
僕は葵に近付き、その肩を叩いた。
「さあさ、行こうよ!」
「お前なあ……」
不満げに葵が口を尖らす。
にっこりと笑い、彼を宥めた。
「まぁ、クリアできるんだからいいじゃん」
「……」
不満そうにしつつ、彼は僕の肩を叩き、道へと歩み出していった。