Burn one's boats
それもそうだ。
つけっぱなしのテレビ。
投げ出したコントローラー。
申し訳なさそうに開いてある参考書。
僕たちは魔導師でも剣士でもない。
普通の男子高校生だ。
しかしこの状況で、誰が勉強していたと認識するだろうか。
「あ、お邪魔してます」
「いえいえー」
ニコリと笑顔を浮かべる葵のお母さん。
しかし次の瞬間、彼女の顔は般若となった。
「葵? これはどういうこと?」
「ちがっ……」
「何が違うの?」
葵の顔から血の気が引いていく。
彼は僕の腕を掴み、お母さんの前に立たせた。
「こいつが! 薫がゲームやろうって!」
そうやって僕を売るな!
掴まれている腕をほどき、軽く葵を睨む。