Burn one's boats
一瞬の間。
そして。
「バカ言え! そんなことしたら……」
「まぁ、どうするかは葵次第だよ。僕は知らない」
「え?」
葵が固まる。
僕は立ち上がり、カバンを掴んだ。
そして、葵のお母さんに頭を下げる。
「お邪魔しました」
「いえいえ。また来てくださいね」
「はい」
笑顔で送り出してくれる。
さすが葵のお母さん。
「お、おい!」
後ろから、呼び止める声が聞こえてきた。
素直に振り向き、彼を見る。
「お前、逃げる気か?」
「うん。だって僕たち……昔からこういう関係でしょ?」
青ざめながら僕に手を伸ばす葵に向かって、にっこりと微笑みかける。
そして、僕は葵の部屋を後にした。