闘志、燃ゆる魂
第壱話 覚醒
気が付けば、自分とあの男がいるだけの間。何もない空間であった。
――目覚めたか……。
男が告げていた。漆黒の髪を肩まで垂らし、足元までに及ぶ書を携えている。
感覚はない。目だけが、男の動きを追っていた。
「お前に名を与えよう……」
鮮明な声が降りかかり、男は書を置く。膝を低くし、露になったその顔に特に印象は無い。凡庸な、文人としての顔であった。
指が触れた。男にしては細い、ながらも決して痩せこけているでもない、色白の指。
額が熱い。そこから流れ込む記憶。
「行け。そして、歴史に名を刻め――」
――目覚めたか……。
男が告げていた。漆黒の髪を肩まで垂らし、足元までに及ぶ書を携えている。
感覚はない。目だけが、男の動きを追っていた。
「お前に名を与えよう……」
鮮明な声が降りかかり、男は書を置く。膝を低くし、露になったその顔に特に印象は無い。凡庸な、文人としての顔であった。
指が触れた。男にしては細い、ながらも決して痩せこけているでもない、色白の指。
額が熱い。そこから流れ込む記憶。
「行け。そして、歴史に名を刻め――」