闘志、燃ゆる魂
「へえ、お前すげえなあ……」
何度か斬り合った後、感心している声を聞いた。
あの男とも、この斬り伏せた者とも違う。頭に黄色の布をしているのは同じだが、奴には敵意を感じない。癖のある黒髪に、背は少し低い。体格はややがっちりとしている程度だ。
惨状を前にしても気さくにこちらに近づいてきた。死骸をまたぎ、よう、と軽く発している。
敵なのか、最も味方などいないのだから、見る者全てを敵とみなしてもいいのだが。
「おいおい、勘違いすんなよ。俺は敵じゃねえ」
そう、勝手に決め付けていた。大刀の切っ先を放ったが、奴にたじろぐ様子は皆無。ひとまずは武器を降ろした。だが、腰に剣を差している。
「まあ、これに、これじゃ警戒すんのも無理ねえけどさ……」
奴が苦笑しながら言った。頭の黄色の布、腰の剣。どれを取っても殺してきた者達との相違が生じない。
「お前は……?」
念の為に聞いてはみたものの、奴は途端に表情を変えた。
「あのなあ、人に名を聞く時はまず、自分からだろ? まあ、いいけどよ……」
口角を上げて、奴は得意げない笑みを漏らしている。
「俺は、大賢良師張角(たいけんりょうし ちょうかく)様に仕える裴元紹(はいげんしょう)様だ! まあ、下っ端だけどな……」
あの笑みはなんだったのか、すぐさま苦笑めいて話す奴、裴元紹には敵意どころか呆れてしまった。
「な、なんだよ! その表情は! じゃあ聞くけどよ、てめえは何なんだ!?」
「……周倉(しゅうそう)」
これが自分の名。それ以上は、何もない――
何度か斬り合った後、感心している声を聞いた。
あの男とも、この斬り伏せた者とも違う。頭に黄色の布をしているのは同じだが、奴には敵意を感じない。癖のある黒髪に、背は少し低い。体格はややがっちりとしている程度だ。
惨状を前にしても気さくにこちらに近づいてきた。死骸をまたぎ、よう、と軽く発している。
敵なのか、最も味方などいないのだから、見る者全てを敵とみなしてもいいのだが。
「おいおい、勘違いすんなよ。俺は敵じゃねえ」
そう、勝手に決め付けていた。大刀の切っ先を放ったが、奴にたじろぐ様子は皆無。ひとまずは武器を降ろした。だが、腰に剣を差している。
「まあ、これに、これじゃ警戒すんのも無理ねえけどさ……」
奴が苦笑しながら言った。頭の黄色の布、腰の剣。どれを取っても殺してきた者達との相違が生じない。
「お前は……?」
念の為に聞いてはみたものの、奴は途端に表情を変えた。
「あのなあ、人に名を聞く時はまず、自分からだろ? まあ、いいけどよ……」
口角を上げて、奴は得意げない笑みを漏らしている。
「俺は、大賢良師張角(たいけんりょうし ちょうかく)様に仕える裴元紹(はいげんしょう)様だ! まあ、下っ端だけどな……」
あの笑みはなんだったのか、すぐさま苦笑めいて話す奴、裴元紹には敵意どころか呆れてしまった。
「な、なんだよ! その表情は! じゃあ聞くけどよ、てめえは何なんだ!?」
「……周倉(しゅうそう)」
これが自分の名。それ以上は、何もない――