triangle



その日の帰り、咲奈と別れた後で、正紀が来るのを待った。

咲奈の側に居たいなら、泣かないでほしいと思うなら、彼に告白の返事をちゃんと伝えないとと思ったから。


「…あ、」


少しして、友人と並んで歩いて来る正紀の姿を見つけて、思わず変な声が漏れる。
正紀も驚いた顔を見せた後、目を逸らされた。
そして、そのままあたしの横を通り過ぎようとする彼の腕を捕まえる。


「待って!」

「……」


彼は何も言わなかった。
でも、その足を止めて、隣に居た友達に短い別れの言葉を交す声が聞こえた。

あたしは、腕を掴んだまま、顔を上げることが出来ず、無言のまま固まる。

彼も口を開かなかった。


「……えーっと、ごめん」


沈黙に耐えられず、何とか声を絞り出すと、正紀の腕を掴んでいたことが急に恥ずかしくなって、慌ててその腕を解放する。


「何してんの?」


それは今までに聞いたことがないほど、鋭い彼の声。
別人のようなそれに驚いて顔を上げると、そこには想像とは違った彼の顔があった。

声だけ聞けば、怒っているようだった、でも。


「あんたのこと、待ってた…」


実際は酷く苦しそうな、

泣き出しそうな、そんな顔で、

あたしを見つめていた。










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