triangle
それは、初めて見る正紀の顔で。
なんでか、凄くかっこよく見えた。
そして、その時分かったんだ。
「あんた、本当にあたしのこと…」
好きなんだね。
そう言葉に出した途端、視界が揺れた。
正紀の顔が滲んで見えない。
正紀にちゃんと向き合いたいのに、
涙が邪魔をする。
なんでだろう、涙が止まらない。
「うん、好きだよ」
涙で顔は見えないけど、驚いた様子もなく、
むしろ当たり前だ、とでも言うかのような落ち着いたその声に、いてもたってもいられなくなった。
あぁ、そうか。あたし、
「ごめん…ごめんなさい…」
咲奈に対する自分の気持ちばかりで、
正紀の気持ちに気付いてなかった。
気付いていたのに、気付いていなかったんだ。
正紀の気持ちだって、薄っぺらなものではないのに。
こんなに想われているのに。
それに気付こうとしなかった。