triangle
その後の事はあまりよく思い出せない。
立っていられなくなって膝から崩れ落ちたのとほぼ同時に吐き気に襲われて、その場に小さくうずくまったことは覚えてる。
でも、その後、どうなったっけ?
正紀の影が近付いてきて、
でも、顔を上げられなくて、
そして、どうなったんだっけ?
思い出せない。
多分、思い出したくない。
「莉子。ねぇ、莉子ってば」
「え、あ…何?」
「もう、今日一日中ボーッとしてる」
ちょっと怒った咲奈が教科書を持ってあたしの前の席に座る。
「え、勉強、するの?」
もう帰りのHRも終わって、教室から次々に生徒が出て行く中、正紀も鞄を片手に、一瞬こっちに目をやってから友達と教室を出て行った。
「ちょっとだけ、勉強していこーかなって。でも、一人は寂しいし、一緒に残らない?」
そう言って、答えを聞かずに教科書を広げだした。
まぁ、勿論、答えなんて決まってるけど。
「うん、いいよ」
当たり前で、ありきたりな返事をすると、
咲奈はちょっと上目遣いで、言ってきた。
「ついでに、さ」
正紀と何があったかも、聞かせてよ。
「………」
こんなにドキドキして、
こんなにキュンキュンして、
それなのに、
現実は全然ハッピーなんかじゃない。