重なる身体と歪んだ恋情

「あ、あのっ、私お酒は……」


あまり得意なほうじゃない。だからそう言ったのに、


「大丈夫。これはジュースのように飲みやすいですよ」

「あ」


有無を言わさず奏さんは私の分も注いでしまった。

って、こういうのって私がやるべきだったのかしら?

そんなことを思ったところで後の祭りで、


「どうぞ」

「……」


シュワシュワと弾ける泡。

中にある液体は薄い桜色。

なんて綺麗なのかしら。


「そういえばあなたと二人きりで話すのはあのお風呂以来ですね」

「――なっ!? あ、あれはっ!」


慌てる私に奏さんは吹き出すように笑って。


「乾杯」


勝手に私のグラスに自分のグラスを合わせて、カチンと甲高い音を作ると綺麗な液体を喉に滑らせていった。

だから仕方なく私も、


「い、ただきます」


そう言ってちょっとだけ口に含んで。


「あ」

「どうしました?」

「美味しい……」


小さく呟くと、


「それはよかった」


と奏さんはグラスの中のものを飲み干してしまった。
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