重なる身体と歪んだ恋情

「あぁ、なんでしたら今、私が教えましょうか?」

「えっ? い、今!?」


慌てる私にニコリと笑う奏さん。


「What's your name?」

「あ、あのっ」


いきなり英語で話されても私にも心の準備が!!

慌てる私に彼は笑顔のままシャンパンを注いでくれて、


「What's your name?」


もう一度繰り返す。

なんだった?

えっと、えっと――。


「マ、マイネームイズ、チサ、サクライ」


これであってるはず、よね?

なのに彼は少し渋い顔をして。


「あなたはいつまで桜井千紗なのですか?」


そう言われて。


「あ」

「もう一度」


私は彼の妻なのだと気付かされる。


「……My name is Tisa Kiryu」


だからこう言い直すと、


「それでいいです。とりあえず名前くらいは間違えずにお願いします」


と思いっきり嫌味を言われてしまった。
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