重なる身体と歪んだ恋情
奏
「趣味が変わったの? それともそういう趣味だったの?」
不明瞭な電話でクスクス笑う八重の声が聞こえた。
「どういう意味かな?」
なんとなく言いたいことは分かるけどね。
「結婚だって驚きだったのにお相手はあんなお子様だなんて」
普通の反応。
八重も普通の女と言うことか。
「幼くとも彼女は血統書正しい公家の出だよ」
「あら、そんなものに縛られるような男だとは知らなかったわ」
「仕事には色々と必要なことがあってね」
私の声に八重は「だと思った」なんて甲高い笑い声を響かせた。
「それじゃ、可愛いドレスつくってあげる」
「ちゃんとフォーマルなもので頼むよ。彼女は私の妻なのだからそれらしいものをね」
「……」
しまった。
最後の台詞は余計だったか?
「なら、ちゃんと教えてくれなきゃ」
あぁ、機嫌を損ねてしまったか。
「どうやって?」
面倒だな。
「目の前で、教えて。マネキンは用意しとくから」
「今夜は無理だよ。接待が入ってるからね」
「なら明日」
仕方ない。
「では明日」
短くそう告げて電話を切った。