重なる身体と歪んだ恋情
じき、夜が明ける。

出来れば少し眠りたかったが、今から眠るのは中途半端というもの。

緑川が迎えに来るだろうし。

だからシャツに袖を通し衣服を身に纏う。

朝食はどこかで取ればいい。

今日の仕事はなんだったかな?

そんなことを考えながら気怠いをドサッと椅子に落として昇り始める太陽を眺めた。

金はある。伴い、それなりの地位も手に入れた。

何不自由の無い生活。

血統書つきの妻も手にいれて、傍から見れば順風満帆と言ったところだろうか?

なのに、

この満たされない感じはなんだろう。

どれだけのものを手に入れたら人は満足するのか。

それとも人は満足の出来ない生き物なのか。

そんなくだらない考えに乾いた笑いが口から零れてしまう。


「さすがに疲れたか?」


そう口にしてしばらくの間、目を閉じることにした。
< 117 / 396 >

この作品をシェア

pagetop