重なる身体と歪んだ恋情
着替えて下に降りたときにはも奏さんは居なくて、私はいつものように一人だけの食事を。
だけど二日酔いのせいか食欲が無い。
何より身体がだるくて。
「二日酔いに効くハーブですか? なんだろう」
郁のいる庭に座り込んでる。
「とにかく喉が渇いちゃうの。それに頭は痛いし身体はだるいし」
そう言って真っ白な椅子にだらしなく座って空を仰ぐ私に郁は笑う。
「千紗様、それってまるで疲れた中年の男みたいですよ」
「失礼ね。でもこれからはシャンパンなんて飲まないようにするわ」
「少しだけになさればいいんです」
その声は郁とよく似て、だけど違う声で。
コトリとテーブルに置かれたのは赤い液体。
「なに、これ」
「ハイビスカスという花のお茶です」
「お花を飲むの?」
「日本茶も所詮葉っぱです」
「……」
確かにそうだけど。
葉っぱが飲めるなら花だって。食べれる菊があるというのも聞いたことがある。だからおかしくは無いと思う。
それにしても赤い液体。
まるで血のようなのだけど透き通ってとても綺麗。
カップに手を伸ばして香りを吸い込む。
……正直、そんなにいい香りじゃない。お花だって言うからもっと期待してたのに。
ゆっくりと口をつけて体の中に。
「……酸っぱい」
とても酸っぱいのだけどさっぱりで。
「ハイビスカス、それは綺麗な花らしいのですが南国のもので。日本で育てるのは無理そうです」
そんな郁のうんちくを聞きながら結局全部飲み干した。