重なる身体と歪んだ恋情
ひんやりとした感覚に意識が呼び覚まされる。

誰かが額に手を置いたのだ。

誰か、なんて郁しかいないか。

もう帰ってきたのか?

いや、そんなに眠った感じはないのだが。

もしかして昼で帰ってきたとか?

それなら屋敷に帰さないと――。

そんなことを考えながら重たい瞼をなんとか開いた。


「あ、起こしたかしら? 気分はどう? 如月」

「--っ!?」


想像もしていなかった声に文字通り飛び起きた。

と言っても身体が重たすぎて上半身を起こすくらいしか出来なかったのだが。


「あら、まだ寝てないとダメよ。熱があるんだから」

「どうしてここに!?」


千紗様の肩の向こう、苦笑いをする郁が見える。


「だって私のせいで寝込んでると聞いたらどうしてもお見舞いをしたくて」

「なにを……」


言ってるんだ、このお嬢様は。


「そうそう、もうお昼は食べたかしら? 料理長に頼んで如月のお昼を用意してもらったの。出来れば私が作りたかったのだけどどうしても厨房に入れてもらえなくて」


子供のように唇を歪ませながらの台詞に嘘はないのだろう。

あぁ、余計に頭が痛くなってくる。
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