重なる身体と歪んだ恋情
「私は大丈夫ですからお屋敷に――」
「さあ食べて? 郁、お皿を出して頂戴。ちゃんと食べるまで帰らないわ」
「……」
私の体調を悪化させに来たのか? このお嬢様は。
クスクス笑う声にギロリと睨めば郁は肩をすくめて千紗様の言うとおり皿の用意なんてしてる。
「郁、早く千紗様をお連れして」
「嫌よ」
「千紗様」
「ちゃんと食べてちゃんと寝て。そうしたら郁を置いて帰るから」
私を憤死させるために来たのか?
怒鳴りたい気持ちを抑えて大きく息を吐く。
「千紗様、お願いですから郁と一緒に」
「食べましょう? 如月」
「……」
どうして変なところで頑固なんだか。
こんなところがお嬢様と言うことなんだろうか?
皿を持ってきた郁をもう一度睨めば肩をすくめながらも笑って「すみません、兄さん」なんて。
「どうしても千紗様は兄さんのお見舞いにって。そうしないと一人で行くって言い張って」
一人でって、彼女は私たちの家なんて知らないんだから放っておけばよかったものを。
あぁ、頭痛がひどくなりそうだ。