重なる身体と歪んだ恋情
ドアの閉まる音に頭を枕に落とす。

あぁ、熱が上がったな。

明日は下がらなくても必ず屋敷に行かねば。

他の従業員も馬鹿ではないし郁もちゃんと理解したはずだ。

あとは千紗様ご本人。

ちゃんと嘘をつければいいが……。

それに弥生が付き合ってくれればそれで丸く収まる、はずなんだ。

熱い息を吐いてまた瞼を落とす。

しかし彼女の言うことも一理ある、

何かを食べて体力をつけないことには……。

ふと目をあければ枕元に小さなパンがお皿の上に置かれたままで。


「はっ――」


やられた。

なんて思いながら思わず声を上げて笑ってしまった。


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