重なる身体と歪んだ恋情
廊下に出て階段で。


「おはようございます、如月様」


弥生に会った。


「おはよう、変わったことは?」


私の問いに弥生は「なにも」と答えるだけ。短すぎるだろう?


「……奏様は?」


昨夜は帰ってきたのか、帰ってきたなら何時で千紗様と顔を合わせたのか。

それが知りたくて。すると、


「奏様は深夜にお帰りになりそのままお休みになられました。今日も朝早くに出社と聞いております」


と完璧な受け答え。

時計を見ればそろそろ6時。その私の視線に気付いたのか、


「ではお声をかけに参りますので」


と弥生は軽く頭を下げると階段を上がって行った。

恐らく嘘はついていないだろう。

弥生が何か伝えたとしても私は会っていないと通せばいい。

実際、家に来たところで何も無いのだから正直に話してもよさそうだが、波風は立てないに越したことは無い。

私は弥生とは反対に居間へ。

テーブルクロスを交換し食器を並べていく。

勿論二人分だ。

奏様の朝食時間が早いだけに一緒に席に着くことは無いだろうが、これもいつもどおりに。

水を用意して湯を沸かす。

コーヒー豆を挽いて、


「おはよう、如月。昨日は休みだったとか、もう大丈夫なのか?」


奏様が起きてこられた。
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