重なる身体と歪んだ恋情
もういい。


「帰ります」


その声に荒い息を繰り返しながらも「え?」と顔を私に向ける。

勿論目隠しをしたままだから私の顔は見えないけれど。


「車を用意してください。馬車でもいい。屋敷に帰ると言ったんです」

「あ、あの、でも――」

「なんです?」


冷たく言い放つ私に佐和子は「なんでも」といいながら私の足元に正座する。

目隠されて、両手は縛られたまま胸を露に股からは雫を垂らして。

だから、その目隠しを取ってやる。


「どうです? そのはしたない格好は。申し訳ないと思うなら、早く車を呼んでください」


そう言って彼女の両手を縛っている帯締めを解いてやった。
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