重なる身体と歪んだ恋情
しばらく話していると、ワルツの音楽が流れ始めて二人は手を取り合ってダンスホールに。


「千紗さんも踊るでしょう？」


そんな由香里さんの声に「えぇ、旦那様を探すわ」と嘘をついて別れた。

彼女達を見送ってまたバルコニーへ。

雨の降る中ため息を付いてグラスの中のシャンパンで唇を濡らした。


「……はぁ」


勝手に、

由香里さんも私のように不幸なんだと思っていたのに。

彼女は愛されてとても幸せそうで。

その笑顔がとても素敵で。

私は彼女が羨ましくて仕方なかった。

同じ境遇だったはずなのにどうしてこんなにも違うんだろう？

そっとダンスホールを覗けば楽しそうに踊っている二人。

そして、その奥。

知らない女性と踊る奏さんが見えて。

柱の影に隠れた。

流れる曲が止まるまで。
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