重なる身体と歪んだ恋情
最近は朝ですら奏さんと会うことは少ない。

だからといって不便なことも無いけれど。

今朝も如月の声で目を覚ます。

居間に降りれば私一人分の朝食が用意されて。


「奏様はもうお仕事に出かけられました」

「そう」


こんな会話が挨拶代わり。

今朝の朝食は珍しく和食でなんとなく落ち着く。

ご飯の香りも香ばしい海苔の食感も朝によく似合うと思う。

食後には、


「本日は玉露をご用意しました」


如月の淹れてくれる美味しい緑茶。

雨が降らないまでもどんよりとした雲が空を覆う。

それでも温かいお茶に私は思わず小さく息をはいた。


「千紗様」

「なに？」


ほっこりとした気分のまま如月を見上げれば、彼の表情はいささか曇っていて。


「……どうかしたの？」


これから彼のいことはあまりいいことでは無いのだろうと予想できた。

だけど、


「お見舞いに行かれませんか？」

「誰の？」

「桜井の、お祖母様のです」

「え？」


こんなにも悪い知らせだとは思ってもみなかった。
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