重なる身体と歪んだ恋情

「大丈夫です。辞めさせられたとは言え使用人の一人が折を見ては桜井の家に伺っていたそうです」

「……そう」


それでもずっといるのとは違う。

あの広い屋敷にたったひとり。

どれだけ心細かったか。


「ですので入院に必要なものはすべてこちらで整えました。金銭面もご心配なさらないよう奏様から言い付かっております」

「奏、さんが?」


あまりに予想外の台詞だったから聞き返すと、如月は「はい」とはっきりと答えた。


「恐らく当分入院が続くと思いますので」

「そんなに悪いの!?」


驚いて立ち上がる私に如月はまたも首を振る。


「体調不良は心因性によるものと先生に言われました。恐らく家に押しかける借金取りに心を病んでしまわれたのだと」


だから家に帰らず病院で過ごしたほうが彼女にはよいのだと如月は説明してくれた。

その説明を聞きながら、

兄様なんて死んでしまえばいい。

心からそう思った。

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