重なる身体と歪んだ恋情
その週末も舞踏会。

最初だけ彼に付き合ってその後は廊下やベランダに隠れた。

まだ梅雨明けには遠くて外は雨が降ったり止んだり。


「鬱陶しい……」


何もかも。

兄様に連絡を取ろうと試みたけれど全くダメで。

家にも帰っていないようだと如月が教えてくれた。

本当に、どうしようもない人。

ホールを覗けば彼は私の知らないご婦人と談笑中。

それはとても楽しそうに笑って話してて、そのご婦人と腕を絡めたり。

そしてオーケストラがワルツをかなで始める。

聞こえてくるリズムにその場で小さく足を動かしてみた。

1,2,3、1,2,3.


『大丈夫、しっかり掴まって――』


何も知らない子供の頃が一番幸せだったと思う。
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