重なる身体と歪んだ恋情
なんて、不自由な贅沢。
これから先、私は食べることにも着ることにも困ることは無いだろう。
それを幸せと言うのかしら?
ずっと履きっぱなしの靴が窮屈で、足をブンブンと振って靴を脱ぐ。
トンっと靴が床にぶつかる音がしたけれど、どこに転がったのかはどうでもいい。
息苦しい。
私はまるで金魚鉢の金魚ね。
食べるものには困らなくても、息苦しくて口をパクパクさせるの。
だけどもらえるのは落ちてくる餌だけ。
金魚鉢の外が見えても出ることは無い。
観賞用に飾られて、一生ここで過ごすのだわ。
「誰か……」
何かを言いたかったのだけど、それ以上は言葉に成らなかった。
だって、なんていえばいいの?
誰に言えばいいの?
伝える相手も、伝える言葉も見当たらない。
ただ、口をパクパクさせるだけの金魚と同じね――。