重なる身体と歪んだ恋情
夕食は暖炉のある部屋で。
用意されていた食事は一人分。
「……奏さんは?」
「夕食はいらないと承っております。帰宅も遅くなるかと」
「そう」
私の声に如月はすっと椅子を下げたからそこに座る。
料理は豪華で美味しいのだと思う。
だけど、使用人たちに見られながらの食事で味わうことも出来ないし、会話の無い食事は味気ない。
桜井家に居たときはいつもお祖母様と一緒で時には使用人の人たちとだって一緒に食べてた。
勿論お話をしながら、笑いながら。
今、周りにはこんなにも人がいるのに私は一人。
フォークやナイフの音が嫌に耳について、早くここから逃げ出したくて仕方ない。
でも出された料理は無理しておなかの中に詰め込んだ。
だって作ってくれた人に悪いもの。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あぁ、食べ過ぎて気分が悪い。
食べ終わって部屋に戻ってベッドに倒れこむ。
如月に「湯殿のご準備が」って言われたけど後でって答えておいた。
こんな状態でお風呂なんて死んでしまう。
「それではそのときは小雪に手伝わせますので」なんて如月が言い出すからそれも断った。
お風呂くらい一人で入れるわ。
お金持ちの考えてることはさっぱり分からない。