重なる身体と歪んだ恋情


大袈裟に揺れる湯面。

湯気の向こうには誰かが居て――。


「おや、これは失礼。千紗さんがいらっしゃいましたか」


にこやかに微笑む彼が見えた。

開けられた扉から消えていく湯気。

ここはお風呂で彼のお風呂に入ろうとしてここに来たわけで、私もお風呂に入ってるから――。


「きゃあっ!!」


お互い裸なのは当たり前。

だからって口から飛び出る悲鳴を我慢することは出来なくて、自分の耳にも痛いほど私の声がお風呂場に反響した。


「そんな叫ばなくても」


両手で耳を押さえて少し不快に顔を歪める彼。

ってか、

見えてます。

隠してよ! この状況で両手を両耳なんてあり得ないでしょ!?

私はと言えば口元まで湯船に浸かってそれでも両腕は胸に巻きつけてるというのに。


「私も入っても?」

「はい!?」


何言ってるの!?


「夫婦なのだから恥ずかしがることなんて無いでしょ?」

「なっ」


あり得ない! あり得ないってば!!

なのにぺたっと彼の足音が聞こえる。

確実にこっちに近づいて。

嘘っ!
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