重なる身体と歪んだ恋情
タイルの床に水が跳ねる音が聞こえる。
それからシャボンの香りが一層強くなって、タイルは泡だらけに。
ぴちゃっと濡れたタイルを踏む音が聞こえて、私は体を強張らせた。
「風呂、好きなんですか?」
「え?」
「ずいぶん長いこと入っていらっしゃるから」
「……」
あなたが出て行かないからです。
とは言えず、「えぇ、まぁ……」と言葉を濁しておいた。
正直言えば、
逆上せそう。
彼が入るずいぶん前からここにいるからもうての指はしわしわにふやけてる。
ついでに言えば、顔は熱く火照って頭の中もふやけてる感じ。
「そうそう、カーテンもお気に召さなければ新しいのをどうぞ。あれは前からかかっているもので――」
どうでもいい。
カーテンなんて気にならないし、好みなんて無い。
そんなことはどうでもいいから、
早く出てよ――。
あ。
「千紗さん?」
グラリと視界が揺れる。
ダメ。
こんなところで倒れちゃ、ダメ……。