重なる身体と歪んだ恋情
それから病院へ行って、


「お祖母様」

「ま、まぁ! 千紗さん!! もう起きてらして大丈夫なの!?」


すっかり小さくなってしまったお祖母様。

彼女に向かって私は出来る限りに笑顔を見せる。


「えぇ、大丈夫です。この包帯も大袈裟なだけで大したことは」

「奏さんに助けられたとか、感謝しなくては」

「……そうね」


お祖母様の言うとおり。

私が今生きてるのは奏さんのおかげで。


「本当に貴女は愛されて、幸せね」


どうして、そこまでして私を助けたのかしら?

一歩間違えば死んでしまうかもしれないのに。

私は、愛されてるの?

彼に聞いてみたい。

そして、


「あ」


思い出したのは銀のペンダント。


「お祖母様、ペンダントを――」


カバンから取り出そうとして、


「いいのよ」


彼女に制された。


「それは貴女にあげたものだもの」

「でも」

「きっと貴女も幸せにしてくれるわ」

「……はい」


だから、私はペンダントをギュッと握ったまま彼女には渡さなかった。
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