重なる身体と歪んだ恋情
これから私は彼の手の傷を見るたびに、彼の愛を確認したくなるだろう。
だけどそれは言葉だけでは計れなくて、目には見えなくて。
だから身体で感じることしか出来ないのに、
顔を寄せた彼のスーツから微かに香ったのは白檀の香り。
思い出したのは、『新橋の葛城』で……。
ねぇ、お願いだから、
「もっと、私を愛して――」
そう伝えると彼は包帯を巻いた手で私を抱きしめて、
「えぇ、誰よりも」
ベッドに私を押し倒した。
彼が私を傷つける。
その傷が消えない限り、私は彼の愛情を感じることが出来るのかもしれない。
「あっ……」
たとえ感じるのが身体だけだとしても。
身体は重なるのに、
心は重ならない。
だけど身体は感じて彼を求める。
これも愛だと呼べるのかしら―?
私の手からペンダントが落ちる。
そして、ペンダントが開いたことに私は気づかなかった。