重なる身体と歪んだ恋情


彼女を無理やり抱いて、残ったのはどうしようもない虚しさだけだった。

後をすべて如月に任せてベッドではなく椅子に腰掛ける。

ベッドには彼女の香りと、私への罪の証が残されていたから。

翌朝、彼女に会うことなく家を出た。

どう接すれば良いのか分からないから逃げるように。

なのに彼女のことが気になって。


「社長、ここにサインを。そしてこの数値には少し無理が」

「あ、あぁ君に任せるよ」


仕事も手につかない。

最悪だ。

だからその日はどこにも寄らずに屋敷に戻った。

すると千紗が部屋から出て来ないという。

まるで子供だ。


「彼女はまだ16です」


……そう子供なんだ。

なのに大野と言う男を誘うから苛立って仕方ない。

司に乗せられるまま彼女の部屋に。

司が呼んでもダメなものを私がどうにか出来るはずも無いだろうに。

そう思って彼女の名前を呼ぶがやはり返事は無い。

ほら、とばかりに司を見ればひどく驚いた表情で。


「千紗様っ!」


乱暴にドアを叩き始めた。

その姿に、最悪の状況が想像されてぞっとした。

もしかして、なんて。

あり得ないわけじゃない。

彼女のプライドは高い。

公家と言うのもあるだろうが本来の気質といってもいい。

凜として真っ直ぐで、その姿勢はあどけない子供の時から変わらない。

だから司と何度もドアに体当たりして、

鏡台の倒れる音と鏡が盛大に割れる音が響いた。

すぐさま千紗に駆け寄って彼女を抱き起こす。

けれどその顔は苦痛に歪み汗だくで、包帯の巻かれた腕はダラリと落ちて……。
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